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The Documentary of Fire fighters

 
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  • 11/23/12:20

第3話 『現場活動で思うこと・・・』

restai.gif 私が救助隊の副隊長に任命されたころのことでした。署内で待機中の午後9時30分ごろ、通信室から救急救助指令が出ました。「〇〇町〇〇付近で普通乗用車の単独事故」との出動指令でした。少し緊張しながら救助工作車に機関員とともに乗り込みました。出動途上の無線連絡によると「車で通りがかりの人が事故を発見し、119番通報してきたもので詳細についてはわからない。」とのことでした。現場近くへ行くと救急隊が先着しており、患者観察も十分にできない状況なのか、隊員3名が呆然と立っていたことが記憶に残っています。

 現場に到着すると救助工作車のヘッドライトに写しだされた光景は悲惨なものでした。普通乗用車がカーブを曲がりきれず道路脇の電柱に激突し、その衝撃で事故車がコンクリート製の電柱に巻きつき、電柱は根本から折れ、電線のみで支えられている状態で、事故車は全く原形を止めていない状況でした。

 救急隊長から患者容態について、全身打撲で瞳孔が散大し、意識もなく、心肺停止でほぼ即死の状態であるとの報告を受け、救助工作車の機関員とともに、カッター及びスプレッター等の救助資機材を現場に運び、患者救出活動に着手しようとしましたが、救急隊員3名、救助隊員2名の計5名では、電柱の倒壊等による二次的な災害も考えられることから、本署に対し消防隊の応援を求め、多くの資機材を使用して救出を試みましたが、時間ばかり経過し救出活動は困難を極めました。

 10分か15分後に消防隊が現場到着した頃、現場付近の道路には車が停滞し、そのうえ現場付近には多くのヤジ馬が集まりはじめ、そのヤジ馬を整理しなければと思いながらも救出活動を続けました。
 時間が経過するにつれ、ヤジ馬のば声が激しくなるとともに、事故車を運転していた若者の家族も現場に来られ、涙を流しながら「息子は大丈夫か」と何回も何回も尋ねられました。現場到着時に救急隊長から患者の容態の報告を受けていたことから、「今、全力で救出しています。」としか答えようがありませんでした。

 現場到着から約40分が経過したころ、隊員たちの懸命の救助活動により幸運にも電柱が倒れることなく、事故車は電柱からの切り離すことができ、ほっと胸をなでおろしたその時のことです。
 意識もなく、口から血を吐き、傷だらけの若者が事故車の運転席に座った状態で、投光器の明かりに写しだされ、現場にいる人たち全員が無言となり、一瞬が静まりかえりました。

 私は、その時全身に大きな衝撃がはしりました。それはヤジ馬の整理をしていなかったこと、特に患者の家族に対する思いやりがなかったことに気づいた瞬間でした。
 救急隊員が無言で駆けより、心肺蘇生を開始したと同時に、家族も駆けより大声で泣き叫んだことを今でもはっきりと覚えています。

 消防が行う現場活動は、各種災害の最前線であり失敗が許されません。全力を尽くして実施した現場活動でも自己満足することなく、その活動等を反省し、その教訓を次の現場活動に生かすことが重要で、現場は、消防職員にとって災害と格闘する場なのです。

イラスト:救助活動
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