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The Documentary of Fire fighters

 
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  • 11/23/12:35

第2話 『ある若者の死を無駄にしないために・・・』

cf17c421.gif  夜八時ごろ、「風呂場で倒れている」との通報により出動したところ、高校生の男子が脱衣場で父親に抱き抱えられているのが目に入った。
 私は、大丈夫ですかと駆け寄ったところ高校生は意識が無く、呼吸停止、心停止の状態であった。すぐに隊員とともに心肺蘇生を実施しながら病院搬送となった。
 しかし、近くの病院は診療担当外のため遠くの病院となった。揺れる車の中でなんとか蘇生させるとの一念で心肺蘇生を続けながら病院へ着いた。

 病院では、担架のまま救急隊が心肺蘇生を続け、医師が気管内挿管を実施したところ脈拍は戻り、呼吸も戻った。「よし、やった」と思ったのもつかの間、自発呼吸も一分ぐらいで停止し、脈拍もこれにあわせて途絶えてしまった。すぐに私達と医師等により心肺蘇生を繰り返した。また自発呼吸が戻った。「よし、こんどは」と思ったが駄目だった。何回も何回も心肺蘇生を繰り返し、救急隊員の顔から汗が流れ落ちる。しかし、徐々に体は冷たくなり脈拍の波形も出ない状態となった。病院へ着いて約一時間が経過し、私達は落胆した。

 これからという若者の命を救えなかった。

 救急隊が現場到着したとき、父親に抱き抱えられただけの状態で何も応急処置がされていなかったことである。少しでも心肺蘇生をしていてくれたらもっと効率が良かったのではないか。
 私は、この日以来いつも救急講習会では、実技に参加してくれない引っ込み思案の人にこの体験を話し、心肺蘇生の必要性や観察の仕方についての指導をしている。

 お父さん、お母さん、いくら「しっかりしーよ、がんばりよ」と力一杯に抱きかかえても命は蘇りません。親の愛情が一杯あっても、人工呼吸、心臓マッサージをしなければ助かりません。こうした話をすると、住民の方も次第に前へ出て何とか覚えようとする意気込みが見えてくる。
 私は、この青年の死を絶対に無駄にしないためにも、地域住民に救急講習等で応急処置の普及を図っていきたい。
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